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借りてきた猫のように

――フィクションの中で生きる~映画・小説・音楽・マンガなどの日常――

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2016年4月8日



 マンガ『聖☆おにいさん』(2012-『モーニング・ツー』連載中)でもくりかえしギャグとして描かれているように、イエス・キリストの降誕を祝うクリスマスに比してブッダ(釈迦)の誕生日は今一つ地味であるかもしれず、地域や世代、宗派による差はあるだろうが「花祭り/灌仏会(かんぶつえ)」などの名前で総称される宗教行事自体ほぼまったく馴染みがない人もいるかもしれない。かくいう私も4月8日はたいてい始業式などで学校にいることが多かったわけで、偶然お寺の前を通りがかった際に甘茶をふるまわれ、「これが噂に聞いていた花祭りか!」と感動したのは比較的最近になってからのこと。
 現在に繋がる日本での「花祭り」の起源は、遡れば明治時代の浄土真宗にたどることができるという説もあり、本来、旧暦で換算すべきところを日本の関東地方以西では桜が満開になる時期であることから「花祭り」として定着していったという。
 何らかの事情で使い物にならなくなった不適格品のことを「おシャカになる」という表現があるが、 熱する火が強すぎてダメになってしまった金物に対し、「火が強かった」⇒「しがつよかった」⇒「4月8日だ」⇒「釈迦の誕生日」というかなり強引な連想による江戸時代鍛冶職人の隠語に由来するという説もあるそうで(諸説ある)、その真偽はともかくも言葉や文化の成り立ちっておもしろい。
 だからこそブッダとイエスが日本の東京立川の安アパートの一室で下界生活を楽しむという日常ギャグ・コメディ『聖☆おにいさん』の、どこまでが本当のことでどこからが虚構かわからない微妙なさじ加減の設定が絶妙で、コミックス12巻第82話では今一つ地味なブッダの誕生日を盛り上げようと「春の脇祭り」が提唱されている。ブッダが母親の脇から生まれたという逸話から、「大切な女性の右脇に挟ませると子宝に恵まれる」脇はさみ人形(焼)を流行らせようという展開になるのだが、まあ実際あったとしても流行らないでしょうね。
 
 話変わって岨手由貴子(1983- )監督映画『グッド・ストライプス』(2015)は、破局寸前だったマンネリ状態のカップルが、妊娠を期にお互いのルーツや家族を探っていく中で新しい家族になっていく話でその赤ちゃんの予定日が4月8日。ここでも何となく「お釈迦様と同じ誕生日」ということが話題になるもそれ以上でも以下でもないのだが、妊娠を期に何となく結婚することになり、結婚式を挙げるに至るまでの数か月を描いた、あらすじだけ聞けばごくありふれた物語が不思議な味わいの作品に仕上がっている。何となくダラダラとつきあっていて、そろそろ別れようかという状態であった主人公のカップル(中島歩・菊池亜希子主演)をはじめ、友人や同僚、それぞれの親や姉妹などをめぐる微妙な距離感や、丁寧に設定されたそれぞれの背景が繊細に描かれていて、何か特別にものすごいことが起こるわけでもないのに惹き込まれてしまう。
 岨手由貴子監督にとって最初の長編商業映画となるらしく、私が水戸に居住していた時期に「水戸短編映画祭」入選作(2004)として印象に残っていた表現者であったこともあって個人的に勝手に感慨深い。水戸短編映画祭は同じく学生時代に入選した辻下直美監督(1983- 「最後のつぶやき」[2011]ほか)など若い世代の質の高い作品が多く寄せられていて毎回楽しみだった。

 さて、そんなこんなで近年は大学もスタートが早く、4月8日もすっかり通常の授業期間になってしまい、ここ数年は「いやあ、今日誕生日なんだよね」などと言って関係性も構築できていない初対面の学生にお義理の愛想笑いとお祝いの言葉を強要してしまうような感じで申し訳なかったのですが、今年は教授会で会議日。
 そういえば、アメリカ滞在中、あちこちのレストランで「ハッピー・バースデー」の合唱がはじまる場面に出くわすことが多く、いくつになっても誕生日を大切にする文化も悪くないなあとちょっとだけ憧れてみたりしながらも、実際に自分のために合唱されたら居心地悪く思ったりもするので「自意識過剰の認識不足」(©『探偵物語』1983)でめんどくさくてすみません。新しい年度のはじまりでもあるので気持ちを新たに、好きなことを好きなようにやり尽せるように初心にかえって頑張っていきたいものです。







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