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借りてきた猫のように

――フィクションの中で生きる~映画・小説・音楽・マンガなどの日常――

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2016年4月20日



 喜劇王チャップリンが晩年を過ごしたスイス、ヴェヴェイの邸宅が博物館「チャップリン・ワールド」として一般開放されることになり、いよいよオープン。
 チャップリンの127回目となる誕生日4月16日にあわせたプレス向け会見・取材、17日の一般公開に先駆けて15日に関係者向けお披露目会とVIPパーティが行われたのですが、日本チャップリン協会会長・大野裕之さん、世界的コレクターの大久保俊一さんに随行させていただく形で訪問させていただいてきました。
 日本チャップリン協会の発足を記念した国際シンポジウムが2006年に京都で開催され、あれから早十年。さながら同窓会のように世界のチャップリン研究者・愛好家の方々と、チャップリンが愛した街ヴェヴェイの、しかも私にとっては映像や写真の中の世界でしかなかったチャップリン邸にて再会させていただくのも嬉しいかぎり。
 
 博物館の詳細については今後様々な形で紹介されることになると思うので興をそがない程度にまずは私自身が楽しめた点を挙げておくと、チャップリンの作品世界のエッセンスを凝縮したダイジェスト映像を映画館で鑑賞した後にロンドンの街並みがあらわれ、映画の作品世界の中に入り込むことができる「スタジオ」の体験型展示が大いなる魅力となっている。さらに『キッド』(21)、『黄金狂時代』(25)、『サーカス』(28)、『街の灯』(31)、『モダン・タイムス』(36)、『独裁者』(40)、『ライムライト』(52)など代表作の中から一場面程度が抜き出され、チャーリーをはじめとする登場人物たちの人形とともに有名な場面を「体験」できる趣向が凝らされている。どの場面が選ばれているか、自分ならどの場面を選定・体験してみたいのかなど想像をめぐらせるのも楽しいだろう。写真撮影はすべて許可されており、現在のSNS時代ならでは。それにしても皆さん迫真の演技でユーモアを交えて写真撮影に興じている。
 また、チャップリン邸「マノワール・ド・バン」がそのままミュージアム化されており、チャップリン家が過ごしていたかつての時代に想いを馳せながら、邸宅にお邪魔させていただくような気持ちを味わうことができる。実際の家具などの調度品も数多くそのまま保存されており、チャップリンが家族と共に過ごしたプライベート・フィルムや写真の数々に囲まれていると、その映像や写真に写っている邸宅にまさに今滞在しているわけで不思議な感覚にとらわれる。世界有数の避暑地として知られるヴェヴェイは山や湖、芝生の緑やワイン畑、カラフルな花など色彩豊か。庭の遊歩道を自由に散策することができるのも贅沢な楽しみ。

 スイス時代のチャップリンは、アメリカ追放後、スタジオも失い、発表した作品数も少なく地味に映るのは否めないが、何といっても20年以上にわたって過ごした終の棲家であって、ファンにとってはリラックスして家族との時間を謳歌していたチャップリンのスイス時代にどっぷり浸ることできるのが嬉しい。文学作品としても評価の高い『自伝』(1964)に加え、未完のプロジェクト『フリークス』構想なども含めて晩年のチャップリン像は研究面からもあらためて注目されている。
 ミュージアム化の企画スタートから16年かかっており、ギフトショップも含めて愛情あふれる丁寧な仕上がりになっている。間口は広くそれでいて奥深いチャップリンの作品世界そのままに、熱心なファンからなんとなく存在は知ってるけどちゃんと作品を観たことがないという層に至るまで幅広く楽しむことができるはず。ファミリーでの訪問も多く見込まれることからも、幼少時にこのミュージアムを通してチャップリンの世界に触れ、やがて実際の作品に親しみを持つようになるような展開も期待される。未来の専門家がここから生まれるかもしれない。
 現在はオープンしたばかりで図録(カタログ)がまだないのでぜひしっかりした版で制作してほしい。また、隣町のモントルー(ジャズ・フェスティバルで有名)にはチャップリン・アーカイブがあって原資料の数々が収蔵されているのだが、いずれはこのミュージアムを中心に研究センター化されていくとさらに素晴らしいと思う(資料のデジタル化および最先端の研究はイタリア、ボローニャのチャップリン・プロジェクトでなされている)。

 このたびは世界屈指のチャップリン研究者・愛好家とともに滞在できたこともあり、解説つきで博物館を見学できたばかりか、チャップリンのお墓参りや彼が愛した公園「チャップリン・パーク」、レマン湖を臨む銅像などもまわることができ、まさに聖地巡礼の趣に。きわめつけはフランスのチャップリン・コレクター、ドミニク(Dominique Dugros)さんの案内で1978年に起こったチャップリン遺骨盗難事件の際に遺骨が隠されていた場所をも訪問することができた(フランス映画『チャップリンの贈り物』[2014]などでも題材に)。
 さらにVIPパーティでは『ニューヨークの王様』(1957)にてルパート少年役を演じたチャップリンの三男マイケルさんと一緒に写真を撮らせていただいた(しかもレッドカーペット上で!)。チャップリン家に加えて『ライムライト』(1952)の主演女優クレア・ブルームの姿も(大野会長に「緊張しすぎ」とからかわれるが、ふつうはそりゃそうでしょ)。
 博物館「チャップリン・ワールド」はジュネーヴ空港からスイス連邦鉄道でローザンヌを経由して一時間弱のヴェヴェイ駅からバスで十分程度。アクセスはわかりやすく絶景の避暑地でもあるので機会あれば多くの方にぜひ訪れていただきたい。今年オープンした「モダン・タイムス」という公認ホテルも近隣にある。夏には未発表原稿『小説ライムライト』(上岡伸雄訳、集英社)も翻訳刊行予定であり、今後も楽しみは増すばかり。










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