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借りてきた猫のように

――フィクションの中で生きる~映画・小説・音楽・マンガなどの日常――

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夏、インストール(2016年7月18日)

「神聖かまってちゃん全国ライブツアー」

『ハリー・ポッター』シンポジウム(これが一番キツかった)、国際モンゴメリ学会(『赤毛のアン』など)、「医療ナラティヴ」パネル、「パンデミック感染SF映画」と4週連続で発表が続き、一段落したので(といっても棚上げにしてしまっている仕事は数多いのですが・・・)、発表終わりの高揚感と開放感に駆り立てられて行ってきましたライブハウス「金沢AZ」!

 ミニアルバム『夏、インストール』を7月6日にリリースしたばかりの神聖かまってちゃんが現在、全国ライブツアーを展開中で、この日(7月10日)のゲストが大森靖子。両者の共演は2014年7月の仙台以来2年ぶりになるが、めったに遭遇できるものでもなく、前回の共演時は観られなかったので、SF大会の三重からついでに足を伸ばすつもりが片道4時間半もかかった・・・。
それにしても客層若い。そりゃそうか。でもまあ同世代(以上)と目される人もちらほら。神聖かまってちゃんは楽屋からライブまで「配信」(ツイキャスによる同時中継)していることが多いので、ライブ会場にいる方がかえって取り残されることさえあるのだが、会場でも皆、端末で配信を共有しあって観ていて(若い人たちに見せてもらえた)、ライブ前や休憩中の楽屋のオフステージの様子を垣間見ることができるのも楽しい。

 先攻の大森靖子を観るのは6月の甲府以来というか、何やかやで毎月何かしら観てるのだが、神聖かまってちゃんメインのライブということもあって、久々にアウェイの「弾語り」仕様。大森靖子にとって金沢でのライブははじめてであったらしく、とはいっても実際のファン層はおそらく半々ぐらいの割合。ライブハウス全体が静まりかえり、演奏をじっくり聞き入る雰囲気も久々で新鮮。ふにゃふにゃ喋るMCから一転して一瞬で曲に惹き込むメリハリも相変わらずすごい。冒頭のMCで神聖かまってちゃんのことを、「同時代の中で戦ってる、同世代のお互いにはみ出た者同士として親近感がある」という類の表現で評していて(正確な表現ではないのだが)、なれ合いというわけでもなく共に友好的な雰囲気に満ちているのも居心地良く、対バンというよりも共演ライブの醍醐味を実感できるのが嬉しい。かまってちゃんの「の子(ヴォーカル)」は大森靖子のことをなぜか「隊長」と呼び終始一貫レスペクトを示していて、一方、大森はの子のことを本名の「大島」と呼び合っていて(大森の方が年下)、それもなんだかおかしみがある。

 神聖かまってちゃんを観るのは4月初旬のZEPP Diver City以来で、その際はドラムのみさこが率いる別バンド、アイドルグループ「バンドじゃないもん!」とのジョイントライブ。アイドルとしての様式美を踏まえていることもあり、バンドじゃないもん!の完成されたステージングに比して、神聖かまってちゃんは相変わらず洗練さとまったく無縁な、不安定であやういところが目立ち、そこにこそ魅力があるといえばあるのだが、コアなファン以外に裾野が広がりにくい大きな要因にもなっている。別に必要以上に売れなくとも必要とする層にだけ届けばそれでまったくかまわないのだが、ニューアルバムにしても「オリコン・ウィークリー1位を目指す」などと宣言していて、ショービジネスの世界である以上、売り上げも意識せざるをえず、売れないと次作のリリースが困難になるのがシビアで厳しいところ(実際は28位で、ちなみにバンドじゃないもん!のシングル「キメマスター」は5位)。実際に次作のアルバムのリリース予定が遠のいてしまったようだ。

 神聖かまってちゃんのライブにもわりと定期的に足を運んでいるのだが、地方参戦ははじめて。の子は意外なぐらい(?)サービス精神旺盛で気を遣う人でもあるので、地方でしかもゲストを招く立場である方がライブの完成度が高い(お行儀が良い)傾向にあり、その法則通り、4年ぶりという金沢では終始、楽しそうにふるまっていたのが印象的。リリースしたばかりのアルバムがデイリー・チャートで11位から30位に落ちたばかりだったこともあり、楽曲に対する不屈の自信と売れないことに対する自虐もほどよい感じで、近年の歌詞に特徴として見られる「弱さをさらけ出せる強さ」も成熟を示しているように思う。
「レコ発ツアーで新曲を演奏するという当たり前のことが(ようやく)できるようになりました」とベースのちばぎんが言うように、日替わりで気まぐれなセットリストで、これまでは必ずしもアルバムをリリースしたばかりのツアーであっても新曲が演奏されるとは限らなかったのだが、ミニアルバムということもあって8曲中6曲もとりあげられ、しかも「リッケンバンカー」ではサビのパートを観客と合唱するという初の試みまで。にもかかわらず、一番好きな「天文学的なその数から」がその前の岡山公演で演奏されていたのになぜかとりあげられず残念。

『夏、インストール』はポップでメロディアスな曲調が多いところに最大の特色があり、古くからのファンには「売れ線狙い」とされて評判が悪かったりもするのだが、もともとビートルズとB’zが音楽の原体験というだけあって、これも重要な一側面。初めてのCM(「Right-on」)タイアップ曲「僕ブレード」に、初めてメンバーによるコーラスを導入した「きっと良くなるさ」など新しい試みも多く、15歳の時に作った曲から30歳を超えて作られた新曲に至るまでを並べてみると、若さと成熟のテーマが立ち現れてくるように思われる。神聖かまってちゃんのライブは不器用で不安定で、でもそれでいて以前よりもちゃんと進行できるようになっていたりもして、時々ものすごく素晴らしいパフォーマンスの日もあれば、来るんじゃなかったと思う時もあって、その不安定な感じが何にも代えがたい魅力になっている。純粋に音楽を楽しんでいる様子、真剣に自分の音楽のスタイルを追求しようとしている様子からは、若さと成熟とが共存しうることを実感させてくれる。30歳を超え、いつまでも学校空間の世界だけを描くままでもいられない。かといって懸命に社会人の胸中を描こうとしても地に足が着いていない浮遊感は拭いきれない。模索期にさしかかっていることは間違いないのだが、その模索している様こそが似つかわしい。

 ラストは大森靖子とのジョイントで、オリジナル・ヴァージョンでは川本真琴がゲストヴォーカルをとった「フロントメモリー」。2年前のジョイント時の大森靖子はほぼ奇声をあげるだけのスタイルに徹していたこともあり、まったく別人のようなパフォーマンスだが、何をどうやってもかまってちゃんにしかならない彼らとは対照的に、相手と状況に応じていかようにも変容しうる大森靖子の柔軟性が際立つ。最後はやっぱり2人とも客席にダイブの大団円で、新しいコラボレーションが生まれる余韻を残しつつ終了。実際にまた共演してほしい。




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