借りてきた猫のように

――フィクションの中で生きる~映画・小説・音楽・マンガなどの日常――

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タイムリープはくりかえす(2016年7月25日)

ドラマ『時をかける少女』

 渋谷PARCOにて「時をかける少女カフェ」開催中(7月7日~8月7日)。夕食時より少し早目の時間を目指していったらもっとも混雑している時間帯の一つであったようで、丸々2時間待ち。整理番号と呼び出しのメールサービスがあるので、待ち時間中によそで時間をつぶせるのはありがたい工夫(と思ったらメール来なかった。あれ?)

 現代のアニメ界を牽引する細田守監督の制作拠点である「スタジオ地図」初のコラボカフェであり、細田監督のオリジナル劇場映画第一作『時をかける少女』(2006)公開十周年を記念する試みで、このほかにも旧作の劇場上映やDVD(ブルーレイ)のアニバーサリー版リリースなどが続く(細田監督の長編映画第一作はマンガ『ONE PIECE』の劇場アニメ第6作『オマツリ男爵と秘密の島』[2005]になるが、オリジナル脚本による監督作品としては『時をかける少女』が第一作)。
『時をかける少女』、『サマーウォーズ』(09)、『おおかみこどもの雨と雪』(12)、『バケモノの子』(15)の長編4作品をモチーフにしたオリジナルコラボレーションメニューは、期間限定ならではのユニークな創作料理になっていて、作品との連関を探るのも楽しみ。たとえば、『時をかける少女』にまつわるメニューでは、「(主人公の)真琴がとどけてくれた桃をふんだんに使った桃とトマトの冷製パスタ」や、「タイムリープ!? プリン・アラモード 食後に何かが起こる!?」など、作品をもう一度じっくり見返してみたいと思わせてくれる趣向が凝らされた丁寧な仕上がりが嬉しいかぎり。原画や背景美術などの展示に囲まれて、作品世界にどっぷりと浸ることができる雰囲気も魅力。「トートバッグ」や「マグカップ」、「携帯ミラー」などカフェ限定グッズも充実している。夕食時の時間帯で、長時間待たなければならない背景もあるのだろうが、家族連れは皆無で、20代以上の女性層(大学生より上)が目立つ。

 7月13日からは新メニュー「あの夏の青空と入道雲ソーダ」が加わり、あちらこちらで「7月13日=ナイス(713)の日推し」。
はて、「『ナイスの日』ってなんだっけ?」と思ってたら、そういえば、細田版『時をかける少女』にてタイムリープによりくりかえされる一日が7月13日で、真琴が鉄道の踏切にて事故に遭い、宙を舞いながら「今日はナイスな日なのに」と不運を嘆く場面が確かに思い起こされる。細田版『時をかける少女』は「青空と入道雲」の青と白のイメージが何よりも印象深く、夏休みを直前に控え、夏休みに対する期待がもっとも高まる夏の一日ということなのだろう。

 ところで私は教養科目「現代文化における思春期の表象(現代日本文化論)」にて、『時をかける少女』を素材に扱っており、筒井康隆による原作小説(1967)、NHK少年ドラマシリーズ『タイムトラベラー』(1972/一部しか残存せず)、大林宜彦監督映画版(1983)から、【TVドラマ】「南野陽子版」(1985)、内田有紀版(1994)、安倍なつみ版(2002)、【映画】角川春樹監督/中本奈奈版(1997)、谷口正晃監督/仲里依紗版(2010)までを比較検討する試みを導入していて、細田守版(2006)は当然その中で重要な分岐点に位置づけられるのだが、後期科目ということもあって、「『時をかける少女』=夏」という印象はこれまで特に抱いていなかった。大林版映画にしてもスキー教室の場面から物語がはじまり、設定は2月から新学期にかけての時期。内田有紀版(1994)も2~3月、安倍なつみ版(2000)はクリスマス・シーズン、仲里依紗版(2010)でもスキーが物語の中で重要な役割をはたしており、設定は冬。

 ここにきて現在、日本テレビ系列で7月9日より最新のTVドラマ版『時をかける少女』が放映されており、夏のイメージが強調されていることからも、細田守版を強く意識して継承されていることが伝わるものであるのだが、それだけ細田版の試みが革新的であったというわけだ。先行する「安倍なつみ」版(2000)が放映された「モーニング娘。新春! LOVEストーリーズ」の枠組みで、『はいからさんが通る』『伊豆の踊子』と併せてのオムニバスドラマであったことが体現しているように、この時点ですっかり『時をかける少女』も古典の定番作品に位置づけられていた。細田版ではすでに古風な物語と化していたこの作品を、「原作の出来事から約20年後を舞台に次世代の登場人物がくり広げる物語」として新しい生命を吹き込み、従来の作品群に対するオマージュを随所に散りばめながら、同時に新しい世代の新しい物語としてゆるやかな設定に翻案する可能性を切り拓いた。仲里依紗版(2010)もこの細田版の延長線上にあり、エッセンスを共有しながら独自の物語として成立している。
 さて最新のTVドラマ版(出演=黒島結菜・菊池風磨・竹内涼真)であるが、原作および従来の『時を守る少女』作品群に対するオマージュを示した細田守版に対し、さらにオマージュを捧げ、正統的に継承すべく、「7月13日=ナイスの日」の夏の印象を強調し、細田版では東京が舞台となっているところを、海の街、静岡県の沼津・伊豆・下田を主なロケ地とすることで、海の街、尾道を舞台にした大林版への連想をも呼び込みながらそれでいて新しい物語としての特色も出している。また、細田版では「今のままでいたい」という感覚を高校2年生の設定によって表していたが、高校3年生の設定に変更することで、高校卒業後は皆、バラバラになってしまう可能性が高いことを示唆し、十代特有の刹那が強調されている。
 現時点で全5回のうち、3回分の放映が終了しており、全5回は連続ドラマとしては中途半端に感じられる回数であるが、実は内田有紀版も全5回であり(南野陽子版、安倍なつみ版は単発)、原作も中編であったことからもちょうどいい分量なのだろう。通常、主題歌が流れるオープニング映像はシリーズで同一となることが多いのだが、その回のストーリーを盛り込み、細部に変化を加える趣向などきめ細かい演出が施されている。今日の二次創作文化も見越しているのか、ファンの間で画像や動画を駆使したサイドストーリーが様々に交わされているのも興味深い現象になっている。
 脚本を担当しているのは愛媛・松山出身の渡部亮平(1987- )で、女子高生2人の友情と狂気を描いた異色の自主映画『かしこい狗は、吠えずに笑う』(2013)や、TVドラマ『セーラーゾンビ』(2014)などで注目されている期待の20代。羽海野チカによる人気マンガ『3月のライオン』の映画版でも脚本を担当する(2017年公開予定)。真正面からストレートに青春や十代の瞬間を捉えようとする姿勢に好感がもてる。従来の作品群の伝統を踏まえた上で、現代の現役の世代の新しい物語に再生させてくれていて、ここから新たにこの物語に触れる世代を過去の作品に誘ってくれることだろう。










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