借りてきた猫のように

――フィクションの中で生きる~映画・小説・音楽・マンガなどの日常――

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海も言葉もこえていく(2016年7月31日)

「海外マンガと翻訳」

 日本マンガ学会海外マンガ部会第9回公開研究会終了。本年度は「海外マンガと翻訳」をテーマに掲げ、研究者、翻訳者、出版コーディネーター、編集者、評論家・・・と多様な視点から海外マンガをめぐる現状とこれからを展望することを目指しました。
 最初の報告者となるCJ Suzukiさん(ニューヨーク市立大学)による「マンガと翻訳――メディアム特性と課題」では、ローレンス・ヴェヌティの理論概説書『翻訳者の不可視性』(1995)を参照し、「同化理論」・「異化理論」の概念に触れた後、具体的な作品分析を踏まえながら、マンガ(コミックス)という表現メディアにおける翻訳を取り巻く課題をどのように捉えることができるのか、問題提起をしていただきました。

 続くライアン・ホームバーグさん(日本マンガ研究[美術史]・翻訳者)による報告「活字声優としてのマンガ翻訳論」では、雑誌『ガロ』の研究者として知られ、林静一、つげ忠男など日本のオールタナティヴ・マンガに位置づけられる作品を英語圏に翻訳・紹介してこられたこれまでの翻訳実践例に基づきながら、日本マンガ翻訳をめぐる可能性と課題について報告いただきました。ライアンさんによる新しい翻訳書となる勝又進_Fukushima Devil Fish: Anti-Nuclear Manga_(『深海魚』、長大な渾身の序論付き)はブレイクダウン・プレスより秋に刊行予定です。

 第二部では、出版コーディネーターであり、翻訳者(アリソン・ベクダル『ファン・ホーム』など)として活躍されている椎名ゆかりさんにより「海外マンガ翻訳事情」をめぐる現状について概観いただいた後、『モーニング』編集部より加藤大さんをお招きして、日本のマンガ市場における海外アーティストの育成(OTOSAMA『西遊筋』)について、フロアとの質疑応答を交えたトーク・セッションを展開いただきました。

 最後に、マンガ評論家であり、当部会代表の小野耕世さんによる講演「私のマンガ翻訳体験――1970年代初めから現在まで」では、海外マンガの紹介・翻訳出版の草分けとして尽力してこられた足跡を様々なエピソードを交えながらお話しいただきました。回想録(メモワール)がそのまま日本における海外大衆文化受容史/日米関係史と重なるところに凄みがあり、今回は主にアメリカのコミックス文化を軸としたお話でしたが、ヨーロッパ、アジア、そしてマンガのみならず、アニメーション、映画、文学などメディアも横断し、しかも現在も現役第一線の紹介者でいらっしゃるわけで、ご本人がすでに一ジャンルそのもの。懇親会後の帰り道に、しきりと新作映画『ターザン:REBORN』を薦めていただき、ターザン文化論の特別講義が続いたのでした。

 席が足りなくなりかけるほどの盛況となり、そのうえ全体で一時間、予定よりも超過してしまいまして、ご参加いただいた方々には窮屈な環境でご不便をおかけしてしまいましたが、おかげさまで活気ある有意義な機会となりました。
 海外マンガ部会は、その性質からも言語、ジャンル、年代などそれぞれの関心領域が多岐にわたり、また、研究者、学生(院生)、評論家、文筆家、翻訳家、コレクター、ファン・・・と、そのあり方も多様な混成主体となっているのですが、その特性を活かすべく、また、2008年度発足の当部会の年次研究会も早いもので次回は10回目となりますので、より多くの方々に関与いただけるようなあり方を探っていきたいです。

 年次大会に加えて、院生(学生)の研究発表会や、あるいは情報共有の場も随時提供できればと思いますので、部会のあり方についてもぜひご意見やご提案をお寄せください。







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