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借りてきた猫のように

――フィクションの中で生きる~映画・小説・音楽・マンガなどの日常――

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世界の片隅のふるさとを訪ねて(2016年8月25日)

「第16回広島国際アニメーションフェスティバル」

 第16回広島国際アニメーションフェスティバルが8月22日に閉幕(於・アステールプラザ)。2年毎の開催で1985年の創設以来すでに30年を超える歴史を持つ。前回(2014年)は都合があわず参会できなかったので4年空いてしまうと久しぶりだが、同じ場所で同じ時期に変わらず開催してくれるのはありがたいことで、ホームに戻ってきたような居心地の良さがある。「今年はいつもより(来場者が)少ないなあ」という声もあったものの、プログラムや運営も落ち着いたものでイベントとしての成熟を随所に感じることができた。

 プログラムの基本構成はまずメインとなる「コンペティション」部門。今回は78ヵ国・地域から2248作品の応募があり、選考を通過した60作品が上映された。グランプリ作品に選出された「空き部屋」のチョン・ダヒ監督は韓国の女性監督。前回の第15回大会(2014年)ではノミネート59作品に日本からの作品が選出されず、騒然となったらしいが、それだけ本気のコンペティション。今回は大ベテランの山村浩二氏(優秀賞)から、多摩美大を卒業したばかりという岡崎恵理氏(国際審査委員特別賞)に、1985年生まれながらすでに各種映画祭で実績を積み上げてきている坂本友介氏(優秀賞)の3作品が入賞。
 アニメーション映画祭というと、どうしても商業的なエンターテインメントとしてのアニメ作品を期待してしまいがちなところであり、かつては家族連れががっかりして途中で早々に帰っていく姿を見送るのが定番の光景でもあったのだが、最近は「アートとしてのアニメーション」の側面にまつわる情報伝達が行きわたってきていて、「子どものためのアニメーション」、「ベスト・オブ・ザ・ワールド」などのプログラムをはじめ、アニメーションの多様性および歴史を体感できる格好の場になっている。アニメーションの原理を体験できる子ども向けワークショップから、大学や専門学校などの教育機関によるブース出展なども新たな潮流を作り出しているのではないか。
 今大会の目玉である「日本アニメーション大特集」は開催期間5日間にわたって、1910年代の最初期アニメーションから、実験性の高い現代の自主制作作品に至るまで一望できるのが最大の魅力であるのだが(2014年度は「ハンガリー」、2012年度は「ノルウェー」特集)、体力的にもよほどの覚悟がないと全部観られない。『AKIRA』(1988)や、ドキュメンタリー映画『マンガをはみだした男 赤塚不二夫』(2016)、「クリヨウジ・手塚治虫・川本喜八郎」の小特集など、もちろん一部だけ観てもおもしろい。本映画祭創設者の一人でもある木下蓮三「ピカドン」(1978)は何度観ても凄みがある。
 ほか、ドキュメンタリー映画『映画界の冒険家 カレル・ゼマン』(2015)、長編アニメーション映画『ファントム・ボーイ』(2015)、「フィンランド最新アニメーション特集」がおもしろかった。海外からの参加者も多いわけで、TVアニメ、アニメ映画など日本のアニメ文化、エンターテインメント分野の状況ももう少し概観できる工夫があればとも思うのだが、自主制作の個人作家の活動や世界のアニメーションをめぐる文化状況に光が当てられる貴重な場として定着していることは評価されてよいだろう。次回の開催は予定通り2018年8月の見込み。

 また、広島から電車で40分ほどの地方都市・呉市立美術館にて、「マンガ・アニメで見る こうの史代『この世界の片隅に』展」が開催中(2016年7月23日~11月3日)。かねてから制作状況が伝えられてきた片淵須直監督によるアニメ映画『この世界の片隅に』が満を持して11月12日に公開決定。クラウドファンディングによる資金調達と、それに連動する形で制作過程が様々な形で紹介される展開など、アニメ制作の新しいスタイルを示す代表例になることだろう。
 原作自体、戦時下の生活文化を詳細に描くところに特色があり、さらにアニメ化にあたり、当時の様々な文書・証言を踏まえた時代考証の徹底ぶりはそれだけで貴重な歴史研究になりうるもの。「ヒロシマ」を女性の視点で、少し離れた町から相対的に捉え直す試みとして、軍港・呉の舞台設定は絶妙であり、原作者の母親の出身地でもある。この展示会では、丁寧な風景・生活描写に恵まれた原作・アニメの豊富な原画展に加え、様々なトークイベントに、さらに地元の高校との連携事業(戦時中の食事やファッション)なども行われ、地域振興としても理想的でおもしろい試みが続いている。消費文化の傾向が進み、展示会開催までこぎつけたとしても、公開期間中の慌ただしい開催であることが多い中で、11月の公開までじっくり盛り上げていく長期開催の展示会となっていることも嬉しい。原作のこうの史代作品はその叙情性と実験性や遊び心に富む表現技法に特色があり、展示には作者の自作解説もふんだんに添えられていて見ごたえがある。公式アートブックは9月14日発売。
 作品のロケーションマップなども用意されていて観光産業としても頼もしいが、実際に舞台になっている境川の小春橋をまわってみると、どう贔屓目に見てもドブ川。あのー、昔の景観を残しつつせめてもう少し綺麗にできませんかね。とはいえ私の出生地でもあり、こうした形での注目はまさに望外の幸せ。アニメ映画の公開がますます楽しみに。







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