借りてきた猫のように

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ストーンズ11年ぶりのニューアルバム(2016年12月30日)


 雑誌『ブルース&ソウル・レコード』(2017年2月号、12月24日発売)はローリング・ストーンズの11年ぶりとなるニュー・アルバム『ブルー&ロンサム』特集号で、詳細な各曲別解説はもとより、ユニバーサル・ミュージックとPヴァイン社の全面協力のもと、特典としてオリジナル・カバー曲すべてをアルバム順に収めたCD付!
 Youtubeなどでもオリジナルの楽曲と聴き比べることができるのが今の時代ならではの醍醐味なのだが、このような連携で音楽を多様に楽しむ下地を作り上げてくれる心意気が嬉しい。
 すでに様々に指摘されているように、ローリング・ストーンズの名前の由来になったマディ・ウォーターズ(1913-83)から一曲も選ばれていないのは意外だったが、マディ・ウォーターズのバンドにも参加していた伝説のハーモニカ奏者リトル・ウォーター(1930-68)から4曲採用されているなど現在のストーンズが何を古典に求めているかを探るのも楽しい。 

 2005年の『ビガー・バン』以来11年ぶりとなる本作は、もともとはオリジナルの楽曲によるアルバム制作の副産物としてもたらされたもので(「脱線」という言葉で説明されている)、レコーディング中に行き詰った際に気分転換としてカバー曲を演奏したところから急転直下に産み出された経緯があるという。わずか3日間ほどで一気呵成に録音されたというだけあって演奏の間違いもそのままの勢いで収録されているほどのライブ感が最大の魅力で、とりわけミック・ジャガーのヴォーカルが若々しい。ブルース・ハーモニカも冴えわたっていて、映像がなくともその得意満面な表情が浮かび上がってくるかのように、楽しそうにセッションを楽しんでいる様子が存分に伝わってくる。
 ロンドンのグローヴ・スタジオで録音していたら、たまたま隣のスタジオに来ていたエリック・クラプトンも誘って一緒にセッションしたという「偶然」までもが運命的に映る。

 22年ぶりに英国アルバム・チャートで1位(日本のオリコンチャートでは洋楽部門で3位)を獲得するなどセールスが好調なのもなにより。キャリアも50年を超え、今さらチャートの順位や売上を気にしなければいけないわけでもないのだが、第一線の現役であり続けていることの指標になるものであり、オリジナルで勝負できないからではなく、カバー・アルバムがむしろ挑戦であったということは重要な意味を持つ。
 ローリング・ストーンズはライブのセットリストも保守的でヒット曲で固めるのが基本。「構想50年」というキャッチコピーが示すように、ブルースのコピー・バンドから出発したことからも、いずれはブルースの原典に立ち戻りたいという想いは実際にあったのだろうが、全編古いブルースのカバー・アルバムを現役第一線のバンドとして出すだけの自信をようやく持つことができるようになったということでもあると思う。
 これまでもシングルとして発表されたソウルのカバー曲「ハーレム・シャッフル」(1986)や、ライブ盤に収録されているマディ・ウォーターズ「マニッシュ・ボーイ」(『ラブ・ユー・ライブ』1977)、スモーキー・ロビンソン&ミラクルズ「ゴーイング・トゥ・ア・ゴー・ゴー」(『スティル・ライフ』1982)などここぞというところでカバー曲も有効に導入されてきているが、あくまで一部のコーナーにすぎない扱いであり、カバー曲中心であったデビュー・アルバム(1964)においても自作曲「テル・ミー」を含んでいたことから、全編カバー曲によるアルバムは50年を超えるキャリアではじめての試み。

 それにしても結成50周年ライブ、過去の音源のアーカイブ化、展覧会開催がこのような形で結実するとは! 2016年だけでも「展覧会」(Exhitionism、ロンドンでスタートし、現在はニューヨークで開催中)、キューバでの記念碑的フリー・ライブとその映画化(『ハバナ・ムーン ストーンズ・ライヴ・イン・キューバ2016』)+中南米ツアーを題材にしたドキュメンタリー映画『オレオレオレ ア・トリップ・アクロス・ラテン・アメリカ』制作、過去の音源のアーカイブ化として、『トータリー・ストリップド』(1995年のセッション)に、1960年代の音源をモノラルヴァージョンでまとめた15枚組ボックスセット『THE ROLLING STONES IN MONO』発表・・・と、買う(高い!)のも、聴く(量が多い!)のも、寺田正典氏の膨大な解説を読むのも(ありがたい!)、追いつかないほどの嬉しい悲鳴の連続。
 ほか、クラシック・ロックの祭典「デザート・トリップ」(10月7日)に登場し、ビートルズのカバー「カム・トゥゲザー」をはじめて披露したことに加えて、ロン・ウッドに双子誕生、ミック・ジャガーに第8子誕生などもあり、話題に事欠かない一年だった。構想されていたはずのオリジナル楽曲によるニュー・アルバムに、新たなワールド・ツアーも期待が高まる。ラスト・ツアーと言われながらもすでに30年ぐらい経っているが、最年長のチャーリー・ワッツも75歳であり、さすがにいよいよ最終局面か。

 アルバム発売のニュースが公表されて以後、インターネット上の公式HPやSNSなどではアルバムのタイトルにあわせて、ブルーに彩られたおなじみのロゴ・マークをはじめとするマルチメディアを駆使した広報戦略は相変わらずお見事。とりわけ日本のアパレルメーカーによる公式グッズは気が利いたものが多く、アルバム発売を記念したストアも充実。
 ロンドンでの展覧会を見学してあらためて実感したが、音楽面でもブルースを基調に、ロック、ソウル、スワンプ・ロック、カントリー&ウェスタン、キースが傾倒するレゲエ、チャーリー・ワッツが傾倒するジャズなどその一般的なイメージよりもはるかに多彩で、なおかつショービジネス、大衆文化への影響、関連も皆が想像する以上に深い。

 ニュー・アルバム『ブルー&ロンサム』からオリジナルのブルースの世界と聴き比べることで双方の特色も見えてくるし、初期60年代ストーンズを聴き比べることで50年の年輪を探ることもできる。ブライアン・ジョーンズってやっぱりセンスあるんだなと実感するなど無限ループのようにどっぷり楽しめる。














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