借りてきた猫のように

――フィクションの中で生きる~映画・小説・音楽・マンガなどの日常――

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医療のなかの「物語」(2017年6月30日)


 文化研究の学際的/国際研究学会、カルチュラル・スタディーズ学会の年次大会(Cultural Typhoon 2017、於・早稲田大学)が6月24・25日に終了。
 さながら「大人の文化祭」の趣で、個々の専門研究を外側に開く理念からも、海外からの参加者、ゲスト登壇者も多く交えた多彩なパネル・セッションのみならず、映画の上映会やパフォーマンスなどもプログラムに組み込まれ、にぎやかな祝祭的空間となっているのが最大の特色。今さら記念写真もなあと思って遠慮してたら、結構、あちこちでパネルの写真がアップされていて、ちゃんと写真撮ってもらえばよかった・・・(というわけで開始前の様子のみ)。

 昨年に引き続き、パネル・セッション「医療ナラティヴにおける『物語の共感力』と社会的機能――人文学研究の応用可能性」を企画しました。
 二部構成のうち第一部では「医療人文学研究序説」として、まず中垣が英語圏の「グラフィック・メディシン学会」の研究動向を参照しつつ、日本の医療マンガの多様性を素材に、「医療人文学(メディカル・ヒューマニティーズ)」の可能性について導入。
 各論として、小林翔さん(メディア研究/表象文化論)に、「医療ナラティヴとしての日本のポピュラー・カルチャー表象」にまつわる分析を報告いただきました。中でも焦点が当てられた、現在放映中の『仮面ライダー エグゼイド』は、実際の病院を舞台に展開される医療エンターテインメント物語の新機軸。
 さらに、落合隆志さん(医療系出版社SCICUS代表)に医療系出版の観点から、闘病体験記の物語構造分析や、実際にSCICUSにて刊行された書籍にまつわる逸話、現在の医療人文刊行物の動向についてなどをご披露いただきました。

 続く第二部は「トーク・セッション――医療人文学の応用の可能性」として、第一部の報告を踏まえ、大変贅沢なことに3人のディスカッサントにコメントをいただき、その後、フロアを交えた対話へと接続しました。
 「哲学」研究者であり、応用人文学の実践となる哲学カフェなどの豊富な経験をお持ちの上村崇さん、大学の医療系学部に所属し、医療系学会にて「医療倫理」研究・教育に携わられている大北全俊さん、複数の病棟勤務を経た後、現在は感染管理認定看護師として医療現場に従事されている徳屋しのぶさんから貴重な示唆をいただくことができました。
 事前に伺いたい/討論したいと思って用意していたトピックのほとんどを実際には扱いきれないまま残念ながら時間終了となってしまったのですが、ジェンダーの観点、メディア表現の特質などの論点をはじめ、医療を媒介に多分野が交錯するダイナミズムを存分に楽しむことができ、おかげさまで有意義な時間となりました。

 これは人文学ならではだなあとあらためて実感したのは、当たり前とされている通念を立ち止まって考えてみることで、より明確に問題が見えてくるということ。
 また、医療現場、医療教育の領域においてすでに「物語」があふれている一側面もあるという指摘はとても興味深いもので、さらに、感動を消費してしまうかのような物語の功罪も含めて、医療をめぐる物語のあり方について今後も吟味していきたいです。
 このプロジェクト(医療人文学/応用人文学/医療ナラティヴ研究)は今後も継続していく予定です。分野の領域をさらに拡張しつつ、医療を軸に様々な分野が交錯する対話の場を作っていきたいと願っておりますので、ご関心のある方、ぜひご一緒させてください。

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