借りてきた猫のように

――フィクションの中で生きる~映画・小説・音楽・マンガなどの日常――

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日本SF大会「ドンブラコンLL」(2017年8月29日)

 第56回日本SF大会「ドンブラコンLL」(於・静岡県コンベンションアーツセンター)終了。SFやファンカルチャーは高度に細分化してそれぞれの領域が発展しているもので、コンベンションの楽しみ方も各人各様で完全に多様。あくまで個人的な雑記ということで。

 私自身の関わった企画「視覚映像文化とSFの部屋」は今年で5年目。主にアメリカSF映画の最新の潮流から毎回テーマを設定し、研究発表/パネル・セッション形式で展開するもので、今年のテーマは「死/不死」。
 SF研究者である小畑拓也さんの報告は、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)を軸に、『ウルトラマン』、『スター・トレック』から、永井豪『デビルマン』、聖悠紀『超人ロック』、ゆうきまさみ『鉄腕バーディー』まで多岐に渡り比較参照されながら、「共生」による「延命/不死」実現の世界のあり方を探る試み。
 特別ゲストのイリーナ・オリーガさんはロシア出身の比較文学研究者。「ディストピアと死」のモチーフを軸に、ペレストロイア以後のロシアにおける日本アニメの受容を探る研究として、『攻殻機動隊』(1995)、『Wolf’s Rain』(2003)にまつわる分析を披露された。
 中垣は、藤子・F・不二雄『21エモン』(1969)における「ゼロ次元」、高橋留美子『人魚の森』(1987)から、映画『未来惑星ザルドス』(イギリス、1974)、『ドウエル教授の首』(ロシア、1984)などを通して、「不老・不死」というユートピア的世界観を追求する背景とそこから顕在化する社会構造的問題、哲学的な問題について論点を提起したところで時間終了。
 SF大会は皆さん、お話がうまくて、しかも会場とのやりとりも巧みに導入されていて、文字通りの意味での「一方通行ではない」トーク・セッションが展開されていて運営面でも学ぶべき(反省すべき)ところが多い。
 このテーマはイリーナさんによる発題であったのですが、結構な手ごたえを感じるものでした。「不老・不死」が実現したSF的未来世界であるはずなのに、不思議とそこが退廃的なディストピアに転じてしまっているという。ちなみにイリーナさんの日本文化への関心の源泉は、「高橋留美子作品における神道の描かれ方」であったそうで、このテーマもまたいずれどこかで。
 SF大会は名だたる方々のお話を気楽に直にうかがえるプログラムが何よりの魅力であり、そんな中、私たちの企画に足をお運びいただけた方々どうもありがとうございました。
 と言いながら申し訳ないのですが、私は同時刻に開催されていた「秋本治『星雲賞』受賞特別企画」を見ることができなかったのが本当に無念。『こちら葛飾区亀有公園前派出所』が星雲賞(コミック部門)を受賞されていたのですよ。

 ふとプログラムを見ると、『この世界の片隅を』のキャンペーンで世界中を飛び回られているはずの片淵素直監督が「アニメーションの知覚心理学――『仮想運動』とは何か」の講師としてご登壇。知覚心理学者・吉村浩一法政大学教授とのトーク・セッションで、アニメーションにおける「動き」の技法、リアリズム表現について分析するという一般公開企画。
 専門性の高い内容ながらも、『この世界の片隅を』の場面に基づきながら解説いただき、とても参考になりました。その後、個人的にお話をさせていただいて、ワシントンD.C.(「OTAKON」)での上映+トークイベントに居合わせたご報告などもさせていただくことができました。SF大会翌日には「ひろしまポップカルチャー」イベントでトークショーをされており、作品を広く届けようとされる地道なご活動に敬服するばかりです。
 そもそも『この世界の片隅に』はSF/ファンタジーなのか?という疑問もあるでしょうが、間口の広さこそがSF/SF大会の良さでもあり、実際に栄えある「第16回センス・オブ・ジェンダー賞 時を超える賞」受賞作に!
 原作マンガのこうの史代作品との併せての受賞で、メディアと時間を越えた奇跡的なコラボレーションと、戦時下の生活を扱う物語にファンタジーの要素を織り交ぜた手法に対する功績によるもの。

 ほか、たまたま立ち寄るセッションのそれぞれで様々に触発されました。
「短編作家としてのバラードの魅力を語る」(増田まもる・巽孝之)では、現在、刊行中の『J・G・バラード短編全集』(東京創元社)を読みたい/読まなければと切に思うようになり、「荒巻義雄、最新作『もはや宇宙は迷宮の鑑にように語る』」(荒巻義雄・巽孝之・増田まもる・三浦祐嗣・高梨治・岡和田晃)では最新作のみならず『荒巻義雄メタSF全集』(彩流社)を、「映画評論家 鬼塚大輔の劇場未公開SF・ファンタジー映画トレーラー『こんなの知ってるかい?』」では、『新感染 ファイナル・エクスプレス』と『シンクロナイズド・モンスター』は劇場でやはり観ておくべきであろうと心に期し、「祝! 新井素子デビュー40周年」では、作品はもちろんのことやはりぬいぐるみとの「共生」は素晴らしいと再認識し、「レトロ星雲賞」の長澤唯史さんの解説をうかがい古典作品を現在の系譜と併せて読み直す意義を再確認し・・・と、例年にもまして収穫の多い大会でした。

 しかも私が目にしたのはそのごくごく一端にすぎないもので、観に行きたかったプログラムはほかにもたくさん。
 次年度は合宿型で、2017年7月21・22日に群馬県水上温泉にて開催。
「視覚映像文化とSFの部屋」は来年も予定してますので、よろしければぜひご一緒ください。







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