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借りてきた猫のように

――フィクションの中で生きる~映画・小説・音楽・マンガなどの日常――

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2015年6月20日


「明くる朝起きた時 昨日と同じじゃ絶対つまらないからさ」
(「ぽろりろりんなぼくもぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃーん」)

 子どもの時はたしかに変化に富んだ毎日を期待していたとしても、もちろん大人になるにつれて、そんな起伏に富んだ波乱万丈な日常なんて望まなくなっていくわけで、神聖かまってちゃんの曲はいつのまにか忘れてしまっていたことすら忘れている昔の気持ちに気づかせてくれる。今日は誰とどんな話をしようなどと思いながら朝を迎えていた子ども時代はいつのまにか消え失せ、そんな気持ちをいつまでもっていたかなんてことすら忘れてしまっているものだ。「昨日と同じじゃ絶対つまらない」。この「つまらない」は確かに子どものボキャブラリーではあるけれども、いつから「つまらない」状況を「つまらない」と思わなくなってしまったのか。

 個人的に(ローリング・ストーンズを除いて)ここ数年一番聴いている音楽ではあったのだが、ここのところ思いがけず感傷的になってしまっていた時期に思いのほか心に響き、片時も手放せなくなってしまった。そういえば、中学生ぐらいの頃って、歌詞カードを見ながら歌いながら聴いてたっけ、ということも本当に久しぶりに思い出した。

 いつバラバラに崩壊してしまってもおかしくないような「刹那」がこのバンドの魅力でありながら、いつのまにか表現力やステージングの技術も目に見えて向上していて、メンバーは皆今年30歳になるけれども、いい年齢の重ね方をしていると思う。子ども時代への単なる懐かしさではなく、昔の気持ちを思い出しながら前を向いて生きていくことは年齢をいくら重ねても今からでもできるわけで、そんな当たり前のことをはるか年下の彼らに教えてもらった気がする。一般的なイメージとはおそらく真逆に、ポジティブな歌詞とポップなメロディラインが彼らの音楽の真骨頂。

 2010年に発表したアルバム『友だちを殺してまで』以降、アルバムはすでに合計6枚あり、なおかつ新曲が随時、動画サイトにアップされていくのでたくさんの曲を簡単に聴くことができるのだけど、いろいろな意味で新たに入り込みにくいだろうというバンドの固定イメージもあり、ベスト盤『ベストかまってちゃん』が出るのは確かに良いタイミングなのかもしれない。

 代表作となる「ロックンロールは鳴りやまない」「ぺんてる」「死にたい季節」「23歳の夏休み」「ちりとり」などが入ったファーストアルバム『友だちを殺してまで』にこのバンドのユニークなエッセンスが凝縮されている(ネット上で聴くことができるデビュー以前の「デモ音源」も素晴らしい)。

「放課後僕と君 掃除当番同士 少し喋りました
優しくしようとして 先 帰っていいよなんて言っちゃいました」(「ちりとり」)

 小学生時代の掃除当番での一コマを描いた「ちりとり」などは他に例を思いつかないような独特の世界で、でも掃除当番の体験なんて誰にでもあるわけで、こんなどこにでもある日常の光景でまるでオペラや演劇を観ているような世界観を創出できるのがすごい。

 ライブに関しては、これほど当日はじまってみないとどんな感じになるかどうかわからないバンドも今どき珍しく、歌いたい曲を歌いたいその瞬間に歌うという即興性も魅力。メンバーも言うように、「12回ライブやったら9回はひどい」こともあり、でもそのうちの数回が本当に素晴らしくて(私は「12分の9」の方しか観ておらずグダグダになったうえ強制終了もしばしば)、それでもここのところ急激にステージングが安定して飛躍的にうまくなっているように思う。

 少年の気持ちをもったまま大人になっていくとはどういうことかをキャリアを重ねるたびごとに作品を通して実践していってくれている。

 ベスト盤に収録された曲以外にも好きな曲がたくさんある。
 「マイスリー全部ゆめ」「背伸び」「ぽろりろりんなぼくもぎゃぎゃぎゃぎゃぎゃーん」「おっさんの夢」「熱いハートがそうさせないよ」「映画」「新宿駅」「ひとりぼっち」「さわやかな朝」「口ずさめる様に」……。

 こうしたラインナップは聞き手が彼らに何を求めるかによってファンの間でもまったく変わったものになるのだろう。音楽や世界観の幅の広さも意外に知られていない側面ではないか。

 タイトルや歌詞の一部やプロデュースのやり方をほんのちょっと変えるだけでもっと受容層が増える可能性は確実にあるとも思うのだけど、でもこういう表現でしか伝えられないという不器用さも彼らの最大の魅力の一つであるわけで、多くの新しい人たちにベスト盤が届くといいな。



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