借りてきた猫のように

――フィクションの中で生きる~映画・小説・音楽・マンガなどの日常――

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2015年6月30日

 アイドルグループ「嵐」の地方ライブにより、全国からファンが押し寄せてきてその地域中のホテルがすべて埋まってしまうという社会現象について耳にはしており、学術会議など他のイベントが日程をずらさざるをえないというニュースについては「へえ、大変だなあ」などとまったくの他人事でいたのですが、なんと自分も「巻き込まれていた」ことをつい最近教えてもらい、現在のところ完全なる「宿無し状態」。

 今年の9月に仙台での学会で報告をする予定であるのですが、その学会自体は東北支部による開催なので多くの参加者にとっては宿泊の必要がなく、他地域から移動するわずかの登壇者のみが宿泊難民になりうるものの、その数名さえ問題が解決するのであれば、日程を再調整する方が大変になるために現状、予定通りとのこと。数日先であっても自分が「どこで」「何をしているか」わからないぐらい気ままに日々を送っているので9月の予定なんてまったく想像の範囲外なのですが、発表「後」であればまあいいですけどね。たぶん。女性ファンが多いイベントであれば男性用カプセルホテルは空いているだろうし、という希望的観測。朝方、誰かが止め忘れた目覚ましのアラームが鳴り響き、「殺すぞ」と怒号が飛び交う殺伐とした雰囲気も、自分が揉めごとに「巻き込まれさえしなければ」それもまた名物ということで。

 「ホテルがない」と言えば(いささか強引ですが)、アメリカ・ティーンフィルムの原型を作った偉大なるジョン・ヒューズ(監督・脚本・プロデューサー)のロード・ムービーとして『大災難P・T・A』(1987)があり、「P・T・A」とは「飛行機(Plane)/鉄道(Train)/車(Automobile)」の略で、感謝祭の休日を家族と過ごすためにビジネスの出張先のニューヨークから家族が待つ自宅のあるシカゴに帰ろうとする物語。ロード・ムービーであり、「バディ(相棒)・フィルム」として少し珍しいのは行動を共にする2人がまったくの他人であり、ふだんであれば絶対に一緒にならない組み合わせのはずなのに、大雪の非常事態のためにビジネス席の予約がキャンセルされ、予定外の空港で降ろされ、ホテルもどこも満員で・・・とその後も数多の困難を共に体験することになるという巻き込まれ型コメディ。悪気はないが、がさつでドジな同行者のおかげで悲惨なほど次々と試練に巻き込まれてしまうにもかかわらず、ジョン・ヒューズならではの優しい眼差しが感動的な物語に仕立て上げている。「異色のロード・ムービー」の物語は結局、「友達になる」物語として帰結する。

  「『大災難P・T・A』の現代版」という呼び声高い『デュー・デート――出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断』(2010)は、ビジネスの出張を終えて出産を間近に踏まえた奥さんのところに駆けつける主人公が、やはり悪気はないが、がさつでドジな同行者のおかげで悲惨なほど次々と試練に巻き込まれてしまう物語であるが、帰るべき町は西海岸であり、移動距離だけでも大幅にスケールアップしている。また、大雪などの天候不良ではなく、テロ未遂と誤認され、航空会社から搭乗拒否をされてしまい、やむなくレンタカーで移動しようとするものの、財布や身分証明書などを含めた一切の荷物を機内に忘れてしまったことから、相性の悪い同行者に依存せざるをえないという展開になっている。

 「デュー・デート」とは「締切」を表す言葉であるが、この場合は「出産予定日」であり、初産を迎える奥さんのために、また初めて生まれてくる赤ちゃんの出産に立ち会うために、主人公は必死に数多の困難を乗り越えようとする。途中、足を引っ張る相棒を捨てようとする局面もあれば、本気でキレて殺してしまいそうになることもあるが、結局は寛容に相棒を受け入れ、「大人になっていく」ことが「父親になる」ことと重ね合わされており、大人への成長物語にもなっている。『大災難P・T・A』へのオマージュとしてプロットがほぼ同じであるにもかかわらず、「父親になる」設定を加えていることにより、「リメイク版」とも異なる新たな印象を付与することができている。

 アメリカ文化における「移動の想像力」を軸に据えた論文集『アメリカン・ロードの物語学』(松本昇・中垣・馬場聡編、金星堂、2015)では、25編の論文に加え、映画・音楽などのコラムなどを付しているのだが、編者の一人として関与させてもらうことができ、楽しい経験を得させてもらうことができた。

 『大災難P・T・A』についてはコラムで扱うことができたものの、『デュー・デート』についてはさすがにプロットがほぼまったく同じなので外してしまったのだが、ビデオメールを交換していた恋人に間違って浮気の証拠ビデオを送ってしまった大学生が悪友と共にビデオを取り戻すための旅に出るという『ロード・トリップ』(2000)をはじめ、『ハング・オーバー』(2009- )シリーズなどでロード・ムービーを得意とするトッド・フィリップス監督による作品であり、何かの形でとりあげられれば良かったな。今さらロード・ムービーなんて、と二の足を踏みそうなところ、1970年生まれのフィリップス監督はコメディ色豊かなロード・ムービーで新境地を切り拓いている。『デュー・デート』は「父親になる」成長物語の系譜からみていってもおもしろい作品。








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アメリカン・ロードの物語学

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