借りてきた猫のように

――フィクションの中で生きる~映画・小説・音楽・マンガなどの日常――

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2015年7月4日

 福満しげゆきの4コマ風エッセイマンガ『うちの妻ってどうでしょう?』(2008-15)がこのたび7巻で完結。なんとなくゆるい形でだらだら続いていくのかなと思っていただけに終了は残念。 

 友達もできず周囲になじめない鬱屈した思いを常に抱えている著者が『ガロ』をはじめとするマンガ雑誌への投稿を始めながら、アルバイトをしては辞めることをくりかえし、現在の「妻」となる女性に対するストーカーに近いアプローチによる交流など、まだプロのマンガ家としての見通しが立っていなかった時期の不安定な若者の状況を描いた半自伝的マンガ『僕の小規模な失敗』(青林工藝舎、2005)の単行本刊行を契機に注目され、現在に至るまで「自伝/日常のエッセイマンガ」は福満作品の主要な柱となってきた。

 『僕の小規模な失敗』後、雑誌『モーニング』に抜擢され、不定期ながら連載作品となった『僕の小規模な生活』(2006-12)ではその飛躍を象徴するように絵柄が大きく、明るく読みやすくなり、さらに並行して『漫画アクション』にて連載が続いてきた『うちの妻ってどうでしょう?』では「妻」のキャラクターをより前面に押し出し、「妻萌え」のジャンルを創出し(?)、女性読者層をも拡張してきていた。

 『モーニング』での『僕の小規模な生活』はどうやら打ち切りに近い状況であったようだが、人気作家としての状況の変化、子ども2人の誕生、一戸建て住宅の購入など、本人の自虐的なまでの自己評価の低さに反して、意外なまでに堅実に人生を歩んでおり、『僕の小規模な失敗』から10年ほどの歩みをふりかえると勝手に感慨深い思いがある。作品の評価が高まっていってもなお他の作家や編集者、有名人に対する妬みはむしろ増す一方で、女性蔑視と見られることを怖れない独特の見解など、表現者までもが「お行儀のよさ」を過度に求められる昨今の風潮の中では確実に異彩を放つ存在であった。

 ネガティブに自己規定する立場から政治経済の状況や社会問題を独自の視点で分析する見解などはユニークなものが多く、マンガ以外の著書として『グラグラな社会とグラグラな僕のまんが道』(2010)、『僕の小規模な経済学』(2013)などもあり「意外に」器用な面も併せ持つ。経済について福満しげゆきに語らせるとは編集者はさすがによく目配りをしているものだと感心させられる。
私自身、定期的なアルバイトをした経験が一度もなく、学校以外での社会人の経験もなく、一人暮らしの経験もなく(人生の中でインスタントラーメンすら自分で作ったことがなく・・・。それがいいと思ってるわけではないのですが)他の人ができることがからっきしできない自覚は強くあるので福満しげゆきの描く人物像に対しては他人の気がしないというか、あるいはこうなっていたかもしれない自己像を見るような思いを持ち続けてきた。車の免許もないし、ネクタイも自分で結べずに必要な時は配偶者に輪っかを作ってもらって直前に首に通してやりすごしてきたのだが、しかしながら「他人の気がしない」などというのはもちろんおこがましい話であるにはちがいない。

 福満しげゆきは「電車の乗り換えが一人でできない」、「役所で自分の子どもの名前の漢字も書けない」「工業高校で留年を繰り返した挙句、中退」「コンビニでバイトするも仕事がこなせず連絡もなしに逃げる」「県名や地理をまったく把握してない」・・・などネガティブな自己評価を常に前面に出しているが、「最後の『ガロ』作家」と称されるほどに、いかに原稿料が出ないものであったとしても、若い時期からユニークな作品世界を構築しており、出世作となった『僕の小規模な失敗』以外にも複数の著書を早くから刊行している。エッセイ風(自伝)マンガで注目されていなかったとしても確実に知る人ぞ知る作家として評価されていたことだろう。
思春期文化論の観点から私であれば『中二の男子と第6感』(2015- )を推すべきところであるのだが、現在の私の関心のあり方とは異なるものの、中二男子のモヤモヤ感を描いた福満しげゆき作品の真骨頂であり、何者でもない少年期特有の不安定な立場の屈折した心境を描くのが巧い。

 エッセイマンガの難しいところで連載が長期化していくにつれてマンネリ化は避けられず、『うちの妻ってどうでしょう?』に至っては、「妻・子どもをめぐる家族/親との葛藤」、「編集者やマンガ家をめぐる交友や妬み、愚痴、自身の作品執筆について」、「テレビなどを通して知るニュースに対する見解」などパターンが固定化してしまっているために新味は出しにくい。固定読者であればだらだらと日常が続くマンネリズムをこそ楽しむことができるのだけれども、雑誌で読んでいる不特定多数の読者からすれば代わり映えもせず「まだやってるのか」という反応があってもおかしくはない。

 『ドラマCD』(7月10日発売)が出るというよくわからない展開もあるが、ここまでキャラクターと世界観が確立してきたこともあり、在宅で仕事をしている男性マンガ家による育児観察マンガの側面からも、媒体を移してでも、あるいはまた不定期連載などで復活するといいな。















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