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借りてきた猫のように

――フィクションの中で生きる~映画・小説・音楽・マンガなどの日常――

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2015年7月27日

 突然、ミシシッピ川が見たくなって、思いきって来ちゃいました、ミズーリ州ハンニバル!

 なあんて、それなりに予定は早くから決まってたわけで、空港で原稿の大半を書かなければならない羽目に陥ってしまったのは万事私が悪いのですが、マーク・トウェインの国際学会に行ってきました(今回は日本からの報告者は6名)。

 作家マーク・トウェインが少年時代を過ごした地であり、『トム・ソーヤーの冒険』(1876)などの舞台で知られるハンニバルは、たいていのアメリカ人にとって「物語を通して知ってるけど一度も行ったことがない場所」。ハンニバルにあるマーク・トウェイン・ボーイフッド・ミュージアム主催によるこの学会は2011年にスタートし、4年に一度の周期で今回が2回目の開催。先行するニューヨーク州エルマイラでの国際学会も4年に一度の周期(前回は2013年)なので、2年に一回トウェインの国際学会が米国で開かれていることになります。私自身は前回のハンニバルでの学会参会に続き、3回目のハンニバル訪問になりました。

 思えばトウェインが『トム・ソーヤーの冒険』を発表した年齢に私もなってしまいました。発表当時ですら「懐かしさ」を伴っていたのは作家にとっても「懐かしい」少年時代の回想をもとに成立した物語であったわけで、少年時代に対するノスタルジアの機微をわかる年齢に私もなれているのだろうか? まあ今の年齢になっても「何者にもなれていない」浮遊感の只中にいるとは思いもしなかったけど。

 作家研究の学会の楽しみとして、「エクスカーション/フィールド・トリップ」と称するアトラクションがプログラムにふんだんに盛り込まれていて、「(インジャン・ジョーの)洞窟」(広くて暗くて寒くて怖い)、「蒸気船でのディナー・クルーズ」(雨があがってよかった!)、「マーク・トウェインの生誕地訪問(ハンニバルからさらに車で50分。超絶的な田舎。一切何もなく、今は人も住んでない地区)」、「少年時代の家ミュージアム」、「トウェイン役者によるスタンダップ・コメディ」「実在の黒人奴隷女性だった人物に扮した朗読パフォーマンス」など、学会発表も含めて朝9時から連日12時間以上。充実したプログラムを楽しむことができました。正直なところ、イベントの大半は前回とほぼまったく一緒なので一度参会すれば充分と言えば充分なのですが、ミュージアムの改装・発展も進んでおり、一人でふらりと立ち寄れる場所でもまったくないので、4年に一度の周期で再訪できるのはちょうど良いサイクルと言えるかも。

 唯一の孫娘(Nina Clemens Gabrilowitsch)が自殺してしまったことで直系の子孫が途絶えてしまっていたとされていたトウェイン(クレメンズ家)の家系でしたが、このたび新たにDNA鑑定により曾孫(ひまご)娘(great-granddaughter)であることが判明したというスーザン・ベイリー氏による講演もありました。本の宣伝(_ The Twain Shall Meet: The Mysterious Legacy of Samuel L. Clemens' Granddaughter, Nina Clemens Gabrilowitsch._)も兼ねてということでしたが、やたらに話がうまいのははたして血筋と言えるのかどうか?

 また、連日、代わる代わるトムとベッキーに扮した町の男の子女の子たちがもてなしてくれます。『トム・ソーヤーの冒険』中のエピソード「婚約」にまつわる寸劇(?)も。

 2011年に改装中だった「ベッキー・サッチャーの家」がリニューアル・オープン。ベッキーは少年時代のサミュエル・クレメンズ(マーク・トウェイン)が好きだった女の子で実在のローラ・ホーキンスという女性をモデルにした、アメリカで一番有名なキャラクターの女の子の一人。1908年にトウェインが73歳になる年齢でローラ・ホーキンスと仲良く写っている写真がベッキーの家に飾られていて「なんかいい感じ」でした。

 その他、「ジムの旅」(Jim’s Journey)と題されたちょっとした博物館が新たにできていて、そこではハンニバルにおけるアフリカ系の歴史的/文化的遺産がまとめられていました。

 セントルイス空港から車で2時間の距離を、免許もなく、それどころかキャンパス内ですら極度の方向音痴で何の役にも立たない私を無事、連れて行ってくださった皆様ありがとうございました(真夜中に学内で道に迷ってしまいすみませんでした。一歩目から真逆の方向に進もうとしていた時点でまったく頼りにならないことはわかっていたとは思いますが・・・)。おかげさまで楽しく過ごさせていただきました。

 私の発表の司会をしてくださった方は、本業は精神科医(!)なのですが、米国マーク・トウェイン学会での主要なメンバーであり、実証的なトウェイン研究者(自称Twain fanatic)。実は2013年のエルマイラでの発表後に「おまえの発表内容ならこの資料がおもしろいはずだ」とわざわざ郵送で資料を送っていただいたことも。そういえば2005年の発表時にもコメントしていただいたし、こんな感じで顔見知りが増えていくのも専門学会の醍醐味なのでしょう。

 マーク・トウェインの研究者は顔もトウェインに似てくるものなのかと感心していると、実はその人は研究者ではなく「マーク・トウェイン役者」だったりするというのは実はよくあることで、しかしながら、「ああこの人はトウェイン役者なのかな」と思ってたりするとやっぱり研究者だったりして油断はできません。

 ちなみに私自身の発表はトウェインの『放浪者外遊記』(_The Tramp Abroad_, 1880)、『ハックルベリー・フィンの冒険』(1885)とチャップリンの放浪者連作を比較考察しながら、後のホーボー文化史の先駆的存在として位置づけようとする試みで、まだまだこれからという段階ですが、いろいろと示唆をいただくことができて有意義な機会になりました。

 次回の開催は2019年の予定。どなたでも参加できます。ハンニバルでまたお会いしましょう!





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