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借りてきた猫のように

――フィクションの中で生きる~映画・小説・音楽・マンガなどの日常――

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2015年12月30日

ここ数年、海外マンガの翻訳受容がきわだって伸びていて、「ガイマン賞」や「海外マンガフェスタ」などをはじめ様々な方々によるご尽力の賜物であるのだが、学生からも直接的・間接的に(人の紹介などを通して)、特にアメコミ(アメリカン・コミックス)に関する話を聞く(聞かされる)機会が増えた。

「周りに話し相手がいないのかな?」と思わされるいじましい感じもなきにしもあらずだが、最近のアメコミを含めた海外マンガの翻訳はそれだけ飛躍的に進展していることを示す動きでもあるし、とりわけアメコミに関してはハリウッド映画の翻案ものの影響は絶大で、若い世代にも着実に浸透していることを実感させられることが多い。

とはいえかくいう私が「男の子カルチャー」がどうも不得手でアメコミは苦手な領域であり続けているのでしっかり勉強しなければいけないなと思いつつ、ポピュラーカルチャーは勉強してどうなるものでもないので少しずつ広げていくしかないんですけどね。

「海外マンガフェスタ」は2012年以降、毎年11月頃に東京ビッグサイトで開催され、2015年は16か国80名を超えるアーティストが来訪。米国の「コミコン・インターナショナル」、フランスの「アングレーム国際漫画祭」といったイベントをモデルにしているそうで、直接、作家に話しかけることができたり、サインをしてもらえたりできる催しも多く、アーティストとの距離が近いのが最大の利点。コミコン・インターナショナルは米国サンディエゴで開催されているイベントで2016年12月3・4日には東京(幕張メッセ)でもはじめて出張開催が予定されている。

加えて「ガイマン賞」(読者が選ぶ海外マンガアワード/2011年度)もすっかり定着してきており、2015年度の受賞作品もすでに発表されている。受賞作品のラインナップからは海外コミックスの多様性と読者層の拡がりが見えてくる。

得票数1位はオーサ・イェークストロム『さよならセプテンバー(全3巻)』(ヨナタン・ヘードチャーン・平田悠果訳、クリーク・アンド・リバー社/スウェーデン)でスウェーデンの女の子が日本のマンガに憧れてマンガ家を目指して日本にやってくるという話。ありがちな話に映るかもしれないが、男女共用のシェアハウスにマンガ家志望者が集い、恋愛や悩みなどが交錯する青春物語になっていて日本のマンガに近い要素もありながら、スタイルも展開も青春の描かれ方も独特で、そのハイブリッドな性質はまさに海外コミックスならでは。

また、マンガ評論家の小野耕世氏による「小野耕世特別賞」として選出されたのは、ラット『タウンボーイ』(左右田直規訳、東京外国語大学出版会)で、これは確かにありがたい翻訳紹介。マレーシアおよびアジアの古典的名作コミックス(オリジナルの刊行は1981年)で昨年に同じ訳者によって刊行されている『カンポンボーイ』の続編。少年の成長物語を基調にしながら、多文化社会マレーシアの複雑な社会・文化状況も見えてくるもので、解説「多文化空間における出会いと別れ」もとても参考になる。こうした異質な古典作品が同じ時代の年度別収穫として並列されるのは外国文化の翻訳受容の醍醐味。

好調なアメコミ(DCコミックス)からは、【第2位】『シャザム!――魔法の守護者』、【第9位(同率)】『フォーエヴァー・イービル』、【第10位(同率)】『クライシス・オン・インフィニット・アース』がノミネートし、ほかにもアメリカの最新潮流として「青春ハードボイルドもの」【第8位】『デッドリークラス』や、なんだかよくわからない不思議な「SFファンタジー」【第4位】『サーガ』も「こんな変わった作品、はたして日本で受けいれられるのだろうか?」と刊行前に話題になったものだが、届くべき層には届いているようでまずまずの好評価が嬉しい。

BD(バンドデシネ)の豊饒なコミックス文化の伝統を誇るユーロマンガ(ヨーロッパ)からは、【第5位】『ブラックサッド 黒猫探偵』(フランス/ベルギー)、【第9位(同率)】『ラディアン』(フランス/ベルギー)が入賞したが、登場人物が皆動物による異色のハードボイルドものと少年マンガである2作品がまったくタイプが異なっていることもおもしろい。

他メディア/ファン・カルチャーとの連動もますます目立つ傾向にあり、【第3位】『トランスフォーマー――オール・ヘイル・メガトロン』(アメリカ)や「テーブルトークRPG」から【第7位】『マウスガード 1152年 秋』(アメリカ)、ディズニーチャンネルアニメから【第9位(同率)】『フィニアスとファーブ 最強ゴキゲンコミック』(アメリカ)などが並び、それぞれのファン層の厚みを感じさせる。

ほか、5人目のビートルズとしてマネージャー、ブライアン・エプスタインを描いた物語【第6位】『ザ・フィフスビートル ブライアン・エプスタインストーリー』(アメリカ)や、児童文学の領域でも高い評価を受けるにちがいない【第10位(同率)】『ジェーンとキツネとわたし』(カナダ)などは、海外マンガのみならず、マンガにふだんなじみのない層での受容も期待される。

カオスなパワーに改めて圧倒されるもので、海外マンガ好きと一口に言っても、同じクラスに集められたとしても何を話していいのかわからないぐらい好みがまったくバラバラ(笑)。また、日本のマンガ文化だけでもありとあらゆる嗜好やテーマにあわせた作品があふれているわけで、そこに飽き足らずあえて異質な要素を求めようとする海外マンガ受容/需要の動向がかつてよりも見えやすくなってきているのはおもしろい動きだと思う。

「ガイマン賞」HPでは、BD(ユーロマンガ)翻訳を牽引されている原正人氏、海外マンガ研究者・深民麻衣佳氏やマンガ評論家・小野耕世氏による動画をとおして受賞作品の紹介もなされており、海外マンガで過ごすお正月もきっとよいものでしょう。










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